山口修源先生 有難う御座います

山口修源先生に教えを受けて30年、日々の感謝の憶いを綴ります

昔話 弐

山口修源先生と出会う前の話を少しだけ

子供の頃、私は「かぎっ子」でした。母が働いている間、姉と二人、時には一人で過ごす日々。自然と寂しさは感じずに、それが日常でした。しかしその中に、一つだけ未だに忘れられない経験があります。

それは小学校5年生のとき、自分なりに肉の苦手克服を目指して一人で訪れた上野のとんかつ屋の出来事。突然の油の匂いの強さに、心地の良さを奪われ、気分が悪くなってしまいました。食事をほとんど残して店を出た私は、近くの百貨店のベンチで休んでいました。

その瞬間、突然の動悸とめまい。何が起きたのか理解できず、ただただその場に座り込み、死んでしまうのではないかと感じる程の恐怖に襲われました。周囲との隔絶感、一人きりの不安感。私にとっては初めての経験でした。その絶望的な感覚は、小学生の私にとってあまりにも大きな試練でした。しかし、30分ほどで心身ともに少し落ち着き、無事に家路につくことができました。

そのとき感じた不安感や恐怖感、孤独感。それらは初めて経験した感情でした。そんな体験をしたあとも、私の日常生活には大きな影響は見られませんでしたし、それを特に思い出すこともありませんでした。

しかし、今になって振り返ると、その怖れや不安経験が私の中に残り、少なからず影響を与えていたのかもしれません。子供の頃の経験が、大人になった今の自分を支え、時には問いかけてくる。過去の経験が現在を照らす、そんな思いを抱かざるを得ません。